ファッションの世界でも音楽の世界でも90年代リヴァイバルの波がやってきている。ヒップホップの世界も例外ではない。いまや90年代のヒップホップは、懐古主義者たちの住処ではなく、リアルタイムで熱く、新しい養分を現在のヒップホップに与えている。とはいうものの、わたしたちは模倣と創造は紙一重であるが、決定的に違うことも肝に銘じておくべきだろう。そこで、16FLIPの最新MIXCDを聴こう。新旧の楽曲を織り交ぜた、渋く、低くグルーヴする直球150kmのヒップホップ・ミックスだ。ビートメイカー、16FLIPがどのようなヒップホップに触発され、ビート・メイキングに情熱を燃やしているのかを知ることができるという意味でも貴重だ。ストレッチ・アームストロングのラジオ・ショーの2014年ヴァージョンではないかと思わせる凄味があるし、聴き慣れたビートとラップににまったく新しい輝きを与えるのは16FLIPの素晴らしい魔法である。ギャングスター、ザ・ルーツ、ナズ……。それらとフレッシュな楽曲を見事に組み合わせていく。それだけではない。ここでしか聴けない、モス・デフのある曲の16FLIPリミックスが収録されている。最後にもうひとつ。『OL'TIME KILLIN' VOL.2』には、00年代以降のレゲエやダブやベース・ミュージックはもちろん、ダブステップやミニマル・テクノを通過した耳も刺激する音響的/リズム的な快楽があり、ヒップホップ以外のコアな音楽ファンに「ヤバイ!」と唸らせる独自性がある。そして、VOL.2からはじまっているということは、VOL.1がのちに出るということを示唆している。とにかく、いま、黒くて、煙くて、最高に気持ち良いMIXCDがここに完成した。(二木信)

【Track List】

01 - Unknow